プログラム

大会長講演

街活かしで人活かし
~「フィールドセオリー」私が精魂込めて創っていること~

川村慶
 (川村義肢株式会社 パシフィックサプライ株式会社 代表取締役 / 
  一般社団法人 日本車椅子シーティング協会 副代表理事)

■ はじめに
 KAWAMURAグループはB2Cの川村義肢(610名)、B2Bのパシフィックサプライ(85名)で組織されています。事業内容は、義肢装具はじめ生活支援機器全般の製造・販売・適合・コンサルタント業務と多岐にわたっています。創業の精神(1946年)は「障害者にその時代の医学と工学の最高水準に合致する製品を提供すること」そして「義肢装具製作販売に従事する者に、それにふさわしい待遇を与えること」です。「お客さまの願いに応えたい」その想いが、75年の歴史を創りあげてきました。オーダーメイド製造・適合・販売によって成長を続けてきた私たちは、車椅子、住宅改修、人工ボディ、補聴器など、義肢装具の製作販売にとどまらず、幅広いサービスをご提供し、暮らしをサポートしています。

■ 我が社の目指すもの
 経営理念は、「健全な企業活動を続け、全ての社員と家族を幸せにし、社会の進歩発展に貢献すること」です。先に述べた事業内容はあくまでも手段であり、障がい者・高齢者とそのご家族、アスリートたちの「あきらめなくてもいい」を買っていただくことを目的とした会社です。寝かせきりをゼロにすることで医療・介護費を抑え、美しい社会づくりに貢献しています。スーパーノーマル、ニュータイプと言って過言でない「いわゆる障がい者」でなければできない仕事を仕分けするなど障がい者就労の模範企業となる創意工夫を現場レベルで続けています。※現在の法定障害者雇用率(川村義肢)6%(パシフィックサプライ)9%
 私は「世界一愛される会社にすること」「親子三代が一緒に働いている会社にすること」「社員の働き様によりイジメや戦争が無くなること」を目指しています。実現に向かって一歩一歩近づいております。

■ フィールドセオリーとは
 エネルギッシュな社長には周囲に強烈なフィールド(場)ができますが、末端に行くに従い弱くなるものです。学校であれば校風、会社であれば社風、戦前の日本であれば大和魂、アメリカであれば開拓者精神、等も一種のフィールドと言えます。会社に強烈なフィールドができていると、会社にいる社員は強制されることなく、自然にフィールドの方向(同一目標)に向かって行動してくれます。川が物を運ばんとする目的地に向かって流れている(フィールドの方向)とすると、荷物を舟に積んで浮かべるだけで、苦労せずして簡単に目的地に運べるのと同じです。野球で優勝しようという高校は、選手に限らず全生徒が野球に関心を持ち、キャッチボールをしたり、応援団を組織したり、あれやこれやと選手を励まし、全校に野球のフィールド(雰囲気)をみなぎらせています。ここで質問ですが、世の親達はなぜ子供を優秀な学校に入れたがるのでしょうか?それは、優秀な学校は全生徒が勉強するというフィールド(雰囲気)があり、そこへ入学させると自然に自分達の子供も勉強するだろうと思っているからでしょう。我が社で働いているだけで人間力が向上し続けるというフィールドを精魂ぶち込んで創っています。

■ 放牧経営の実現
 業界のカリスマであった父の急逝で私が事業を受け継いだのは31歳の時でした。義肢装具製作の専門会社として世界一の規模を誇る企業を率いることに大きな重圧と焦りを感じ、かつては自分にも他人にも厳しく社内にギスギスした空気が漂っていました。男尊女卑だった会社がなぜ現在のような企業風土に変貌したのか。それは心の経営で自律と利他の企業文化を根付かせてくれた様々なコンテンツの一つが、経営TOPである私自身が生活習慣を強制的に改善させたこと。そしてミッションステートメントを用いた「活力朝礼」を導入したことです。社員一人ひとりがイキイキと働く職場に変わり、当時高かった離職率も激減しました。「すなおな心で自己革新し、実績で証明する」という経営基本方針を実現するため、「喜働(喜んで働く)」を合言葉に、豊かな人間性を備えた社員教育を行なっております。
 パンデミックの中、社員のことを信用することのできない会社はリモートワークさせる・させないと揉めています。KAWAMURAグループでは派遣社員を含むすべての社員一人一人が経営者であり、自ら考え自ら行動しています。700人いれば700の働き方があるという多様性を重んじた考え方であり、多人種、多宗教、多性別を認め合っています。その前提には「責め心の無い厳しさと、馴れ合いではない優しさ」があり、「人と人との関わり方」における生活法則を、仕事を通じて見出している会社です。また、これらを形骸化させないのが地域力です。

■ 最後に
 歴史を創ってきた人間は「わかもの」「よそもの」「ばかもの」です。社員とその家族、そして地域の方々が年齢に関係無く若々しく活力ある生き方をできるようにします。自分とは違う能力を持った知らない人や団体を恐れること無く協働することを愉しみます。そして誰に馬鹿にされようとも奇抜なアイディアを自信満々で行動に移し実績に変えていきます。

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基調講演

リハビリテーション医が語る犬の素晴らしさ
道免和久
 (兵庫医科大学 リハビリテーション医学講座 教授)

【略歴】
1986年 慶應義塾大学医学部卒、同研修医(リハビリテーション科)。94年埼玉県総合リハビリテーションセンター医長。96年Pennsylvania州立大学(Latash研究室)およびATR Human Information Processing Research Laboratory(川人光男研究室)に留学。97年東京都リハビリテーション病院医長。2000年兵庫医科大学リハビリテーションセンター助教授。2005年同リハビリテーション医学講座主任教授。NPO法人CRASEED代表理事。現在に至る。本学会監事、第56回学術集会大会長。主な仕事:SIASの作成、FIMの日本導入、CI療法など。

私は介助犬の専門家ではない。賢い犬をダメにしてしまう「バカな飼い主」の一人に過ぎない。このたび、私がたまたま愛犬家でリハビリテーション科医師であったために、川村慶大会長に声をかけて頂いた次第である。したがって、本講演は個人の経験と私見で構成されることをお断りしておく。
ノーベル賞学者(動物行動学)のコンラート・ローレンツは70年以上前の著書「人イヌにあう」の中で、忠実な犬の永続的な絆は無償の愛そのものである、と論じている。これは愛犬家の誰もが感じていることであろう。それだけに、犬を飼うことには命を背負う大きな責任をともなう。私自身、現在老犬介護を実践している身として、日々多くのことを学ばせてもらっている。これまでに幼児期から飼った5頭の犬の順に私が学んだことをキーワードで列挙する。
【スピッツのリリ】記憶はほとんどないが、死は突然やってきて、無動になり、紙袋に入れられることを学ぶ。【捨て犬のペロ】「犬を飼わない」との掟を破り、道端で拾った犬。命について数々の疑問と自責。【バセットハウンドのWolfy】やむなく安楽死という選択。獣医からの心に残る言葉。【ゴールデンのRuby】自然経過にまかせたつもりの抗がん剤治療。後悔。【ラブラドールのChelsea】現在進行中。ペットショップの売れ残り。精神的介助。がん告知。2度の危篤からの生還。老犬介護とリハビリテーション。現在、毎日の介護の中で感じることは、犬は思うように動けない苛立ちの中でもなお、飼い主を信頼し、忠節であろうとしていること。まさに、「犬は愛と忠節のはかり知れぬ総和」(ローレンツ)のなせる技であり、“Beingの価値”は哲学者・池田晶子の言う「犬の力」そのものである。犬を飼うことは人生を学ぶこと、と再認識している。
さて、リハビリテーション医療・介護分野ではロボットの利用が進もうとしている。介助犬はロボットの発展によって衰退するのだろうか?私はそうは思わない。ロボットが個々の利用者に合わせた介助を行うには、まだ相当の時間がかかるからである。また、既に論じられているかもしれないが、ロボットには絶対にできないことがある。それは、人間との絆の構築である。最近多くの研究で、オキシトシンによる人と犬での生物学的な絆の強化が報告されており、石器時代から続く犬の人への忠節が、現代において介護の場面はもちろん、精神面の支援などでも役立てられる時代が来ると信じている。

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開催祝福メッセージ

本学術大会開催にあたり、有森裕子さん、大東市長からメッセージをいただいております。
学術大会参加者に向けてのビデオメッセージとなります。
左列メニューにございます参加登録ボタンより登録を完了いただきますと、期間中ビデオメッセージをご覧いただけます。

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