第32回日本母体胎児医学会学術集会
日台シンポジウム
 
 

第32回日本母体胎児医学会学術集会を担当するにあたり、皆様にご挨拶を申し上げます。今回は、伝統ある「日本産科婦人科ME学会」から「日本母体胎児医学会」へと名称変更をしてはじめての学術集会であります。新名称に対する思いは人それぞれであり、中には違和感を覚える方もおられるかもしれませんが、私はこの名称に大きな夢を託しています。この名称変更が昨今の産科診療における閉塞感を打ち破る契機になってくれるように願いながら、来るべき学術集会の準備を進めてまいりたいと思います。日本の産科診療は優れた臨床成績を上げています。しかしながら、妊娠・出産に対する管理の目標は死亡率を減少させることだけではありません。

 たとえ死産であっても、それは失敗ではなく、立派に終わらせる必要があるものであります。与えられた条件の中で、女性とその家族における生殖という営みをより良い方向に導くようサポートすることが管理の目標であると私は考えます。そこには、客観的であるのと同時に多面的、総合的な視点が必要であります。


 本学術集会では、このような視点に立って、産科における診断法を見直してみたいと思います。メインテーマを「本当に大切なことは何?」とし、妊婦健診における超音波診断はいかにあるべきか、胎児心拍モニタリングはどのように用いるべきか、どのように読むか、についてデイスカッションしていただくことにしました。このような問題を選んだのは、基本的なことに対し客観的かつ総合的な視野に立ち、解りやすくかつ高いレベルで議論しスタンダードを決めていくということが、これまで欠けていたのではないかと考えているからであります。

 

 診療所、病院、周産期センターまで、産科診療にかかわる多くの医師あるいは助産師の方々にご参加いただき、議論に参加していただきたいと考えております。また、これまでと同様に、産婦人科MEに関する発表・胎児生理学に関する発表・その他の産科診療に関する発表も大歓迎でありますので、奮ってご応募いただきますよう、お願い申しあげます。本会は自由な雰囲気で議論を戦わせることのできる学会として、長い間、親しまれてきました。この特徴を失うことのないように、そして、皆様の御役に立てるような会にしたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

第32回日本母体胎児医学会大会長 上妻 志郎

(東京大学医学部 産婦人科学教室 教授)